会議室にある骨董。皿の時計が砂を刻んでいる音ばかりが鋭く響きわたっているなかで、ヘ イヴン人民共和国の世襲大統領は戦略顧問団の面々を見すえた。いたたまれなくなったよう に、財務長官が視線をそらす。しかし、国防長官も、彼女のわきで制服に身を包んでいる次 官も、表情ひとつ変えようとはしなかった。 「たしかなのか?」ハリス大統領が詰問した。 「残念ながら、そうです」フランケル財務長官は不本意そうに答えた。彼は携帯端末を検索 してから、意を決したように大統領を見つめかえした。「四半期ごとの調査でも三期連続で この予測を裏づける結果が出ているんですよ、シド」そう言って、軍事担当の同僚を目の端 でにらみつける。「航宙軍にかかる支出が問題なんです。のべつまくなしに艦船を増やして いくことなど・・・・」 「艦船を増やしつづけないことには、一巻の終わりになってしまいます」イレイン・デュマ